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☆ ☆ ☆
俺は大学2回生にもなって彼女というものがいない身であり、勿論1人きりで夏祭り会場を歩いていた。
俺の視界には、友達同士で来ているのであろう女の子たち、恥ずかしそうに指を絡めているカップル、腕に刺青が入ったヤンキー、大声で騒ぐ化粧の濃いギャル――人、人、人、人。
きっと空からは光に群がる虫のように見えるのだろう。そんなことを思って夜の星を仰ぎ見た。
俺は雑踏をかき分け、歩を進める。周りの人々は夏祭りという“非日常”に期待をしているようであった。かくいう俺もその一員であるのだが。
不意に違和感を感じた。間違いない。誰かが俺の背中をなにかでつついている。
友人であろうか? 一応、俺は振り返ったら指があり、頬を指で突かれるという定番の引っ掛けを注意して、体を後ろへ向けた。
予想外であった。全くの想定外である。
俺の目の前にいたのは、友人でも知り合いでもなく、見知らぬ1人の少年であった。
しかし予想外であったのは、それだけではない。少年の手にはプラスチックの容器。俺のズボンからは雫が落ちる。そう。少年は頬を指で突くなどという生温いことはせず、手にもっていた“かき氷”を俺の下半身に、いや詳しく言えば股間にぶち当てたのだ。
「つめたああああああ!!!」
あまりの冷たさに俺は声を上げた。ズボンの中まで氷が入り込んでしまっている。しかもシロップの甘い香り。間違いなくこのままでは染みになってしまう。そして、周囲の人々から確実に、お漏らしをしてしまったお兄さんと思われてしまう。
下半身に、いや詳しく言えば股間に生息している俺の息子、“ボビー”はその冷たさのため萎縮してしまった。
因みにボビーはかき氷の冷たさを表現するために出てきただけであり、今後、登場する予定はない。
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