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だからレインは出来るだけ剣術場へと急いで向かい、誰よりも早くから胴着に着替えて練習することを日課のようにしていた。
今日も一番早くに剣術場に入ったつもりだったが、既にそこには先客がいた。
更衣室は剣術場の少し中に入った場所に入口があるため、その姿が鮮明に見えた。
小窓から溢れる光に照らされながら、小柄な少女が竹刀を壁に向かって当たらないように素早く振り下ろしていた。
肩に掛かる程度の長さの黒髪が一回一回、竹刀を振り下ろす毎に光を反射し鮮やかに輝いていた。
しばらくその様子を見ていると少女がレインに気付き、素振りを止めて片手で竹刀を持ち、満面の笑みで手を振った。
それを見るとレインはやや苦笑して、小さく手を振り返しながら少女に近付いて行った。
「カナ、早いね……」
「レインが出ていくの見て急いで来ちゃった」
「……っ、それって、絶対走ったよね? 廊下は走っちゃ駄目だ……」
言い終わらないうちにカナがレインに飛び付いて二人が床に倒れ込む。
「おっそいよ、レイン!」
「ちょっ、おもっ……」
「重くないよ! 確かにたまに女の子に間違えられるレインに比べたら重いかもだけど」
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