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冷水に濡れた髪の毛先から、
時折、落ちる水滴。
ピシャン――
と、落ちる度に
水面に拡がる波紋。
それを
クロアの深藍の瞳は
ただ静かに見下ろし、
見詰め続ける。
「……………………。」
“誠”―と表すが相応しい
無言の横顔。
それが
ふっと己の右手を見た瞬間、
「ッ!!」
“裂”―の表情を浮かべた。
水面を叩く様な音を立て、
握り締められるクロアの右手。
“神剣”を振るう
騎士としての利き手。
“最愛”を護る為の
誠を宿す筈の掌。
そして、
“主”であり、“恋人”の
願いを絶ち斬った“背信”の手。
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