†連†

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  その拳を クロアは水面に叩き付ける。 弾き響く水音。 苦し気に俯くクロア。 己のした事に対する “後悔”はなかった。 ―如何なる者であろうと天族である限り“殺すな”― と、常に受けている ロアの“命”に背いた “罪悪”も無い。 ただ、 あの瞬間に垣間見た“ロア”の “最愛”の、 泣き出しそうな悲痛な表情が クロアの心を掻き乱す。 “四位”こと ―ユセル・K・トキア―の屋敷で ユセルを背後から貫いたクロア。 無抵抗な相手を 背後から狙うと言う “騎士”として 最大級の卑劣な手法を以てまで 絶ち斬ったユセルの生命。 クロアには そうしなければならない “理由”があった。 ただ一人の    “最愛”を護る為に…。 だが、 「赦すなッ!!」 一人切りの沐浴の場に クロアの悲痛な独白が響く。 ユセルの屋敷で クロアを許したロアの ――“ッ―許す。” 震えを圧し殺した悲痛な声が 脳裏に響く。 「赦すな…ッ!!」 自らが 許しを求めておきながら上がる “懇願” 「……赦して……俺の罪まで…背負うな…ロア…。」 悲痛、悲愴、悲哀に満ちた声。 クロアの恋人。 ロアにとっての“許し”が 何で有るのか。 それを知るクロアは “禊”の中に血の穢れと共に 荒ぶる感情を棄てようと 必死に己の心に抗う。  
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