†連†

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  クロアが長い禊を終え、 着替えを済ませ、 沐浴の場を出ると、 そこには クロアを待つフィリルが居た。 「何か?」 フィリルの姿を眼にすると 先にクロアの方から フィリルに向け、 問い掛けの言葉を発する。 「あー…うん…。」 そうやってクロアに 先手を打たれたフィリルは、 「…部屋…何処を使えば良いかなぁ。って…。」 取り敢えず、 当たり障りのない内容を 口にした。 「部屋?」 流石に予想外だったのか、 フィリルの言葉に 一瞬、困惑するクロア。 「そう“部屋”。」 フィリルはそんな、 クロアの態度と呟きに頷き、 「ロア様は“自分の管理の棟内なら”何処でも好きな所を使えって仰って下さったんだけどさぁ……。」 ユセルの屋敷で クロアが血の穢れを負った為に ロアに触れる事が出来ず そのクロアの代わりをする為に 聖域に来る事となったフィリル。 「ロア様が“私用に管理しているこの棟内だけ”でも、広すぎて部屋が多すぎるんだよッ!!」 「…………………。」 クロア自身も 昔は身に覚えのある 戸惑いを口にするフィリル。 「俺の使っている部屋の近くに案内します。」 軽く頭を抱えて応えるクロア。 『“隣”って言葉が使えない広さなんだなぁ…。』 その姿に しみじみと“聖殿”と云う場の 常識の違いを実感する フィリルだった。  
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