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そして、
部屋の案内ついでに
ロアの私用の棟内を
クロアに説明してもらいながら
フィリルは、
『今は“訊くなって”事なのか?』
クロアが沐浴の場から出てきて
先に問い掛けた意図を
考えていた。
ユセルの屋敷で
クロアがユセルの
“命”を絶った時、
ユセルが口にした言葉。
“セフィロトの苗木”
『“苗木”は確か“魔族”がロア様を呼ぶ俗称って説明したよな…?』
“苗木の噂”について
過去に魔族がロアの事を
“苗木”と呼んでいたのを
思い出したフィリルに対し、
そう説明していたクロア。
――“現、聖主様の威光”を次代の聖界に“接ぎ木の苗木のように引き継ぐ者”と云う意味合いで‘アレ’が“次期聖主様”を呼ぶ為に使っています。――
『“現、聖主様の威光を次代の聖界に[接ぎ木の苗のように]引き継ぐ者”なのにどうして“セフィロトの苗木”って名称が存在するんだ?』
あまりに巧妙すぎる
クロアの発言。
それ故に確信せざる追えない
意図的に
“苗木”の存在を誤魔化し、
何かを隠そうとしていた
クロアの意志。
『……たぶん……。』
フィリルの中には明白な答えが
確信としてあった。
『……俺って…ほんっと…』
気付いてしまったクロアと
そして“ロアの慈悲。”
『情けないよなぁ…。』
その為にフィリルは、
再び、
時が来るまで待つ事を決めた。
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