プロローグというエピローグ

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想像してみて欲しい。 小学校に入る前から祖父の言い付けで、剣道を始めたとする。 一生懸命、暑い日も寒い日も雨の日も風の日もただひたすらに修練を重ねた。 両親が早くに他界し、祖父だけが唯一の肉親で従う以外に術を知らなかった事もある。 要するに、寝ても覚めても竹刀を振る剣道小僧だったのだ。 いくつかの大会にも出場し、ベスト8に入れるくらいのそこそこの実力もあった。 自慢じゃないが、棒を持てばそこらの不良でも打ち倒せる自信もある。 全ての中心が、剣道と厳しかった白髭の祖父だったのだ。 しかし、中学を卒業する頃に祖父の容態が急激に悪化していった。 今際の際で、祖父は光の消えかかった瞳でこっちを見てただ一言こう言った。 「お前には……剣の才能が…ない………」 それは、文字通り全てが崩れ去った瞬間だった。 今まで剣道に打ち込んできた時間も、努力も、何もかもが水泡となって消えたのだ。 そして、祖父は息を引き取った。今までの時間全てを道連れにして。 さて、質問だ。 唯一の肉親と生き甲斐、両方を一度に無くしたら、どうすればいい?
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