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彼等に支給されたアサルトライフルは秒間数十発もの弾丸を発射し、その威力は一発でも人間の至る部位を瞬時に削り落とす威力を秘めている。
それがどうだ。
目の前の少年は豆鉄砲を食らった程度にすら感じておらず、ただ兵達の恐怖を咀嚼するかのように愉悦の笑みを浮かべるのみで迫って来るではないか。
「次はSSレアくらいの大物に生まれてこれるといいなァ?
そうしたら、褒めてやるよ。おめでとうってな・・・ッハッハッハッハッハ!」
「ひ、ひィ・・・!」
この少年はゲーム感覚で戦争をやっている。
別段、それ自体は戦場に良くある事で稀な事でもないし、畏怖すべき事でもない。
寧ろ、マトモな感性で戦争が出来ないからこそ、そういった道徳観を捨てる事で自己を保っていると考えれば可愛いものではないか。
だが、それは飽くまで同じ人間ならの話だ。
それが正真正銘の悪魔だったなら、話は変わってくる。
「この・・・悪魔め!」
無数の銃弾を浴びながら傷一つなく、笑みを浮かべたまま戦場を我が物顔で歩く・・・これだけで少年を悪魔だと断ずるには十分な証明だった。
それを叫んだ兵もまた、殺し、犯し、蹂躙し、およそ悪魔と呼ばれて然るべき人外鬼畜の所業を数多重ねてきた身でありながら、それを叫ぶのはあまりに滑稽ではあったものの、この少年を前にしては滑稽の概念を逸脱して、マトモな人間のマトモな反応と言えよう。
ただ叫びながらがむしゃらに撃ち続ける。
死と隣合わせに生きてきた兵達が、今になって死を過剰に怖れる。
悪魔に殺されれば、死した後にも絶え間ない苦痛に晒されるのではないかと、根拠もない不安を皆が一様に感じて狂い叫びながら乱射する。
流れ弾が仲間を撃ち抜こうとも、誰も気にも留めない。
寧ろ、悪魔に殺されるくらいならば人間の武器で死んだ方が楽だったと迷妄する者も居れば、今からでも遅くないと自らのこめかみに拳銃の銃口を突き付けて自害する者まで現れるほどだ。
故に味方に撃ち殺された者が居ても、それを幸運だとすらその場の人間の多くが理屈を抜きにして信じた。
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