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「はぁ、はぁ…っ」
真っ暗な森の中私はひたすら走っていた。
着ていた服はぼろぼろ。
はいていた草履も今は役目を果たさない。
破けたところから血が伝い地面を染める。
「…ぁ…!」
疲労のためか、恐怖のせいか転び顔から倒れる。
「グ、グァァァァァアッッ!!」
「っ……ぅ、く…」
すぐ近くから聞こえる人成らざるモノの声。
声と言うにはあまりにも違いすぎて。
ノシノシ…
足音をたてながら近づいてくるソレ。
私は動けず息を飲んだ。
ノシノシ…ノシノシ
一歩一歩私の恐怖を煽るかのようにゆっくりと近づいてくる。
実際、アレはそんな知性など無いけれど。
そして……
「ひっ……っ」
木々の間から月明かりが照らしソレの全貌が見えた。
それは人と呼ぶにはあまりにも違いすぎて。
動物と呼ぶにはあまりにも禍々しい。
涎が伝い口元をテラテラと塗らして光っている。
目は真っ赤に染まっていてまるで血のよう。
巨大な狼のようなでも狼じゃないそれは間違いなく…魔物…
「く…」
動かない体を叱咤して立ち上がり少しずつ後ろに下がる。
一歩下がる。
一歩近づいてくる。
一歩下がる。
一歩近づいてくる。
逃げる隙がまったくない。
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