プロローグ

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「ゥゥ…ぅォオオオオッッッ!!」 遂に痺れを切らしたのか魔物は勢いよく私に飛び付いてきた。 もう、ダメかもしれない…… ガサ、ガサ 草木を掻き分ける音。 それをきいて私は安心した。 ザシュッ!! 「グギャァァァァァアッッ!!」 悲鳴が響く。 魔物の悲鳴が、森の中に響き渡る。 「参じるのが遅くなり申し訳ありません」 頭上から低い男の声が。 目を開け見上げると淡い茶髪の癖毛が見えそのからのぞく瞳は優しい、穏やかな光を携えている。 「…遅いぞ、竜也(リュウヤ)」 「申し訳ありません。命(ミコト)様」 竜也はむき出しの日本刀を鞘に収め手を差しのばしてきた。 「さぁ、屋敷に戻りましょう。怪我の手当てをしなくては」 「そうだな」 差し出された手に私の手を重ね頷く。 今日は疲れた。 「まったく…巫女というのも疲れるな。こうも命を狙われては気が気じゃない」 「ええ。…それに命様は『蒼雪珠』の巫女でもあらせられますから」 「そう、だな…」 『蒼雪珠』。 我が一族の秘宝。 時間を操る事ができると伝えられている。 その力は巨大ゆえ『蒼雪珠』の巫女である私は常に狙われている。 だが。 「守って、くれるんだろう?」 「ええ、この命をかけて。生涯お守りいたします」 竜也はそう言うと笑った。 はらはらと風花が舞っていた。
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