1人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ん」
冷たい風が吹き寒さに命は目を覚ました。
寒さのあまり震え上着を手に取り羽織る。
長い艶やかな黒髪が肩から零れ落ちた。
「ああ、雪か」
どうりで寒いはずだ。
窓を開け外を見ると視野一杯に広がる銀世界。
鉛の空からは真っ白な花が地面に落ちてゆく。
命はしばらくそれを眺めたのち手早く着替え自室から出た。
「おはようございます。命様」
「おはよう…毎度ながらどうしてこう私の部屋の前に待っているんだ?」
今は慣れたが前はそれはもう驚き若干恐れもした。
「一刻も早く命様に会いたくて」
語尾にハートが付きそうな調子で竜也は言った。
「命様、朝食の用意はできています」
「わかった」
こうしていつも道理の一日が始まるのだった。
朝食を食べ終え命は竜也と共に隣町に来ていた。
何でもそこで怪異が起きているらしい。
怪異――それは人ならなざるモノ…妖怪等が起こす現象の事。軽い場合はいいがそれがひどい場合最悪、命を落とすはめになる。
そしてそうした怪異を鎮めるのが代々巫女の家系である時神家―その直系の命なのだ。
「しかし、今回は雑魚で助かったな」
今回の怪異は人が行方不明になること。
それを命は鎮めたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!