一話:風花の舞う日に

2/23
前へ
/26ページ
次へ
「……ん」 冷たい風が吹き寒さに命は目を覚ました。 寒さのあまり震え上着を手に取り羽織る。 長い艶やかな黒髪が肩から零れ落ちた。 「ああ、雪か」 どうりで寒いはずだ。 窓を開け外を見ると視野一杯に広がる銀世界。 鉛の空からは真っ白な花が地面に落ちてゆく。 命はしばらくそれを眺めたのち手早く着替え自室から出た。 「おはようございます。命様」 「おはよう…毎度ながらどうしてこう私の部屋の前に待っているんだ?」 今は慣れたが前はそれはもう驚き若干恐れもした。 「一刻も早く命様に会いたくて」 語尾にハートが付きそうな調子で竜也は言った。 「命様、朝食の用意はできています」 「わかった」 こうしていつも道理の一日が始まるのだった。 朝食を食べ終え命は竜也と共に隣町に来ていた。 何でもそこで怪異が起きているらしい。 怪異――それは人ならなざるモノ…妖怪等が起こす現象の事。軽い場合はいいがそれがひどい場合最悪、命を落とすはめになる。 そしてそうした怪異を鎮めるのが代々巫女の家系である時神家―その直系の命なのだ。 「しかし、今回は雑魚で助かったな」 今回の怪異は人が行方不明になること。 それを命は鎮めたのだ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加