一話:風花の舞う日に

5/23
前へ
/26ページ
次へ
「そう思ったとしても本人の前で言うではない」 「それはそれは、申し訳ありません」 申し訳ありません、と言いながらも全然そのようには見えない。 「まぁ、お前がどう思おうがこれは既に決まったこと。今更止めにするとは言えまいて…お主とて、このまま帰る訳にはいかんのだろう?」 急に話を振られた竜也はニコリとほほえみ頷いた。 「はい。僕は本日より命様の護衛役ですので。命様がなんと言われようと、何を思われようと。命様が強いのだとしても危険なのは変わりませんから」 「昔からお前は魔物などに狙われている。巫女だからな。強いといっても絶対に死なない。とは限らないだろう?」 それをきき命は不機嫌そうに鼻で笑う。 「ふん…私は認めない。そんなに私のボディーガードがやりたいのなら私にそれを認めさせろ」 そう言い捨て命は部屋から出ていった。 それを見て偲はため息をつく。 「すまんな」 「いえ…しかしなぜあそこまで命様はボディーガードを必要としないのですか?」 たとえ自分の腕に自信があってもボディーガードがいれば少なくとも今よりかは安全だろうに。 「…いろいろ、複雑なんだよ」 「そうですか」 あまり検索しないほうがよさそうだ。 そう思い竜也はそれ以上は聞こうとしなかった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加