『幸せの対価』

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口ではそういったけれど、実際はそこまでそうは思わなかった。 人間など醜く愚かな生き物だと… 長い世代を生きてきた魔族の私はよく知っている。 『落ち込んだ時はよくこうして海にくるんです。 なんだか、海が嫌なことを洗い流してくれるような気がして…』 『――――司ちゃん。』 『は、はい?』 私はポケットから、例のモノを取り出した。 司ちゃんの目がキラキラと光った。 『わぁ…!きれいなネックレスですね。小さな赤い宝石がついてて…』 『あげるわ、それ。』 『え、ええ!? ダメです、こんな高そうな物…』 私はゆっくり、ハッキリと口にした。 『そのネックレスは「L」という、不思議なネックレスなのよ。自分の幸せを願うと現実になるの』 そこまで聞いて、司ちゃんの表情がスッとくもった。 仕方ないとは思うけれど… 『試してみるだけでいい、おまじないだと思えばいいの。 これの使い方次第で、あなたは元の生活を取り戻せる。』 ピクリ、と司ちゃんの肩が動く。 『もとに、戻れるの?』 『信じれば、ね。 嫌なら捨てていいから』 『…ううん! 私、変わりたい……使ってみます!』 私は黙ってうなずく。 『ただし条件がある』 『なんですか?』
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