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今日の剣道場には顧問の姿が無い。
顧問不在だが、部長が剣道部を仕切り、いつも以上に気合の入った部活になっている。
「よう、昶。今日も部活に来るなんて珍しいじゃん」
三年生の剣道部員が不敵な笑みを浮かべて話す。
嫌味ったらしいその言葉に動じず、昶は普段通りに言葉を返した。
そして練習に戻ると三年生の剣道部員は軽く舌打ちをし、顔には眉間にシワを寄せていた。
「それではこれより練習試合を始める。選ばれた者は前へ」
部長の男がそう言うと、選ばれた十名の剣道部員が立ち上がる。
十名は部長の前に五名ずつに別れて向き合い、お互いに頭を下げ深々と挨拶を交わす。
今から行われる練習試合。
選手は赤と黒の組に分かれ、黒の組の中には昶の姿がある。
そして最初の試合が行われる。
双方譲らない攻防。
だが、勝負は一瞬の判断であっさりと決着がついてしまう。
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