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練習試合は三対二で赤組の勝ち。
黒組で白星を上げたのは昶とその次に試合した二年の先輩だけだった。
剣道場の小窓からは夕日のオレンジ色の明かりが差し込んでいる。
部員は練習を終え、次々に道場から出て行き、学校から帰宅し始める。
昶も制服に着替えを済ませ、部長に挨拶を述べると道場を後にした。
外の空は黒い雲が掛かり、怪しい雲行きになっていた。
その様子を気にも止めず、通学路を逆走し、自宅に向かって歩いて行く。
街中のビルが立ち並ぶ道。
普段なら七時前と言うこの時間帯でも多くの若者が見受けられるが、今はその姿が見当たらない。
その光景に辺りを見渡す昶は不思議そうな顔をしていた。
それも当然。
人影が少ないなら偶然とも思える。
が、しかし昶の周りには人影が全く無い。
不気味なまでの静けさ。
その静けさを切り裂く様に女性の悲鳴が響き渡る。
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