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右手に握られたナイフは弧を描き、昶の顔目掛けて振りかざされる。
しかし、紙一重でナイフを避けるとそのままローブの男の横を通り過ぎ、全速力で走り抜けて行く。
「ほう、避けたか。面白い少年だ 」
五分程走り続けた昶の息は激しく乱れていた。
膝に手を付き、辺りを見渡す素ぶりを見せる。
視界が及ぶ範囲にはローブの男は見当たらない。
頬をつたう汗を左手で拭うと、袖には赤い染みが付着していた。
先程避けた筈のナイフは昶の左頬をかすめていた様だ。
血は止まっているが傷跡はハッキリと残っていた。
呼吸も落ち着き、隠れていた細い路地から出ようとする。
一歩出た瞬間、目の前を遮る黒い布。
昶の腹部にはナイフが突き刺さり、徐々に制服を赤く染めて行く。
「楽しかったよ、少年」
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