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「大丈夫だ。俺たちが普通にさえしておけば誰にも気付かれないよ」
哀の言う通りだった。
周りには沢山の花見客が居るが、みんなそれぞれ花見を楽しんでいる。
自分達が騒がなければ、誰にも気付かれない。
青葉に口籠り、眼を伏せた。
哀はそれを一瞥すると、念力で固まっている白桜の方に向いた。
手に握られている団子を取り返すと、自分の口に放り込み、食べ終わると念力を解いた。
何の前触れも無く、いきなり体が自由になった白桜は、よろけてそのまま転んでしまった。
「うわっ……!?…痛っ…」
どうやら白桜は転んだ拍子に肘を擦りむいでしまったらしい。
傷から僅かに血が浮かぶ。
ピリピリと痛む傷に白桜は顔を歪ませた。
それに気付いた青葉は、白桜を人目に付かない所に連れて行き、周りに誰も居ないのを確認し、白桜の肘に自分の手をそっと置いた。
指の間から何色とも表現し難い淡い光が漏れる。
光が消え、青葉が手を退けると、もう傷は消えていた。
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