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ナスターシアの告白に、黙って耳を傾けていたクロウに、逆に問いかける。
「クロウはどうして? なぜゼイン王と共に戦うことにしたの?」
「なりゆきだな」
「なりゆき?」
「まぁ、強いて言えば――あいつの作る未来が見たかっただけだ」
何でもないことのように付け加えられた一言に、ナスターシアは目を見張った。
包帯を巻き終え、立ちあがろうとしたクロウの腕を、思わず掴んで引きとめる。
「どうした――」
「私も!」
「はぁ?」
心臓が高鳴り、ナスターシアは顔が火照るのを感じた。
クロウの腕を掴んだまま、抱きつきたくなるような衝動を抑え、目を輝かせる。
「私も、ゼイン王が作る未来を見てみたいの!」
同じ志を持つ盟友に出会えた気になり、一気に目の前の青年に親近感が沸いた。
ただ同志というだけではない。
彼は〈時読みの賢者〉だ。
自分と同じように感じ、同じ気持ちを抱き、王を導いた者がいる。
その事実が嬉しかった。
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