第三節 未来を視る少女

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 今度はクロウもベッドサイドに腰掛け、隣に並んで治療をしてもらう。 「……ッ」  擦りむいた傷口に消毒液が染みるがぐっと我慢する。  その反応に、一度クロウの目線が上がったが、すぐに掌に戻された。  男の人らしい骨張った長い指先が、掌を滑る様子をじっと見ていると、だんだん気恥ずかしい気持ちが湧いてくる。  とはいえ手を引っ込めるわけにもいかず、ナスターシアは俯いた。  その間にも、優しい手つきで包帯が巻かれていく。 「…………」  少し横暴で粗野なところがあるが、こんな風に、突然現れたナスターシアに文句を言いながらも世話を焼いてくれるクロウは、実は心の温かい人なのかもしれない。  視線をナスターシアの掌に落とし、真剣な表情で手当をする彼の顔を、じっと上目遣いで伺いながらそんなことを思っていると、急にクロウが顔を上げた。 「何だ?」 「な、なんでもないわっ」  黒曜石の瞳で見返され、慌てて目を逸らす。 「変なヤツだな」  呆れたように呟いて、クロウは仕上げに包帯の端を結んで留めた。 「ありがとう……」  当代随一と名高い魔術師、魔道長官アスランが処方したという薬草の効力は抜群で、嘘のように痛みが引いた。
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