28人が本棚に入れています
本棚に追加
今度はクロウもベッドサイドに腰掛け、隣に並んで治療をしてもらう。
「……ッ」
擦りむいた傷口に消毒液が染みるがぐっと我慢する。
その反応に、一度クロウの目線が上がったが、すぐに掌に戻された。
男の人らしい骨張った長い指先が、掌を滑る様子をじっと見ていると、だんだん気恥ずかしい気持ちが湧いてくる。
とはいえ手を引っ込めるわけにもいかず、ナスターシアは俯いた。
その間にも、優しい手つきで包帯が巻かれていく。
「…………」
少し横暴で粗野なところがあるが、こんな風に、突然現れたナスターシアに文句を言いながらも世話を焼いてくれるクロウは、実は心の温かい人なのかもしれない。
視線をナスターシアの掌に落とし、真剣な表情で手当をする彼の顔を、じっと上目遣いで伺いながらそんなことを思っていると、急にクロウが顔を上げた。
「何だ?」
「な、なんでもないわっ」
黒曜石の瞳で見返され、慌てて目を逸らす。
「変なヤツだな」
呆れたように呟いて、クロウは仕上げに包帯の端を結んで留めた。
「ありがとう……」
当代随一と名高い魔術師、魔道長官アスランが処方したという薬草の効力は抜群で、嘘のように痛みが引いた。
最初のコメントを投稿しよう!