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帰っていたのは兄だった。 どこかで雨宿りをしてきたのだろうか、あまり濡れていない。 「おかえり」 兄の視線が私に向けられる。 金色の髪の毛。 ピアスが無数に付けられた耳。 派手な服。 私とは似ても似つかない。 「おう。風呂湧いてる?」 「うん」 兄はカバンをソファーに放り投げ、浴室へ向かっていった。 兄はこれでも頭が良かったのだ。 高校三年の時に、ひどいイジメにあい、高校を中退。 両親は東大を受けるものだと思っていたため落胆した。 兄のやることに口も出さなくなり、やがては関心すらしなくなった。 そして、兄に向けられていた期待は、何倍にも膨れ上がって私に押し付けられた。
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