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しかし、最近になってデルビル達にも心を開き、特訓の合間の少ない自由時間にじゃれ合い、
そのときのケニーの身体の温かさを知った。今まで味わった事の無い、
なんとも心地の良い感覚だったのを覚えている。
そして今、感じているこの温かさはそれに近いものなのだ。
だが、どこか違う温かみなのだが、言葉では表しにくい良い意味での違いだった。
「よし!あとはこの玄関をくぐり抜けるだけだ・・・!」
色々な事を考えているうちに、デルビルを抱かえ込んだポケモンは嬉しそうな声を漏らした。
そしてそのポケモンは玄関に通じるドアを静かに開ける。そのわずかに開けた小さなドアの隙間から
細かな足取りで身を乗り出した。
「気をつけて、この玄関ホールだけは毎日、警備員が数人がいるんだ・・・静かにね・・・。」
その言葉の意味を理解したデルビルは呼吸を鼻呼吸だけにして、ゆっくりとした深呼吸に変えた。
抱きかかえられた中、まわりを見渡みると、真っ暗な広いホールは天井が高く、壁には大きな絵画がいくつも飾ってある。
着飾った玄関の大きな扉の上には横に長細い窓が付いており、そこから月の光りが漏れ出していた。
唯一のこのホールの明かり―――、と思ったそのときコツコツと鳴った足音と共に目映い光りが目に入った。
それと同時にデルビルを抱え込んでいるポケモンは動くのをぴたっと止める。
おそらくあれが警備員なのだろう。
このとき得体の知れない緊張感が走った。
コツコツとした足音と眩しい光がこちらへ迫るのがわかったからだ。
だが、幸いこのホールの真ん中には2階にフロアに繋がる階段があり、
抱え込んでいるポケモンはその階段の脇の下に影を潜めている。
明かりと足音は丁度、階段から降りてくるものであったため、その正体である警備員には死角となった。
「うーん、気のせいかぁ・・・。」
抱え込んでいるポケモンとはあきらかに違う低い声が階段の上から聞こえた。
おそらく低い声の主は警備員のものだ。
その警備員は階段から明かりを床に向けてあちこちに照らしたが、
デルビルとそれを抱かえ込むポケモンを捉えることはできなかった。
そのまま警備員は渋々と2階のフロアへと足を戻していった。
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