4人が本棚に入れています
本棚に追加
森は以前、起きていた事が嘘のように閑散としており、
風の音と彼のポケモンの歩く音以外、何も聞こえてくるものは無い。
幸い、この日は満天の丸い月が地上の暗夜を淡く照らし出してくれていたため、
普段より暗闇が視界を阻むことが無い。
その為、周りの状況は目でも薄々と捉えることができた。
脱走の際でも苦難を強いられる事なく走り続けられたのもこの満月のおかげだった。
彼のポケモンはいくつか木々を超えて行くと、一番近くある1本の木の下で歩むのを止めた。
そのまま腰を屈めて、抱きかかえていたデルビルを木の傍へと放した。
「ここまで来れば、さすがに追って来ないだろうね・・・」
どこか安心したような落ち着いた声が漏れる。
「僕は館に戻るよ。まだ今夜中にあそこにいるポケモン達を救えるかもしれない」
デルビルはそれを聞いて思わず驚いたが、話を続ける。
「だから僕に構わずに先に逃げていって欲しいんだ!」
わかったかい?語尾に低い声色で付け加えた。
しかし、デルビルは了承しない。
彼のポケモンが立ち上がり、館に戻ろうとする背中に付いて行こうとする。
それを認めない彼のポケモンは振り向かず張り上げた声で来るな!とだけ言い放つ。
それでも付いていこうとしたそのとき――
遠くで足音が聞こえるのが分かった。
それも記憶に新しいあいつらの足音だ。
最初のコメントを投稿しよう!