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暗い暗い、光が存在しない真っ黒な底のどこかに一人男が立っていた。
男は何をするべくでもなくただ立っていたが、その手には異様な『道具』が握られていた。自然界では表せぬ人為的な加工物の形をした漆黒の光沢を放つ鉄の塊ーーー『金槌』を手にしていた。
男は何もない空間を見つめ続ける。
このまま沈黙が続くかと思われたが変化が起きた。
『ーーー』
聞こえる。
ゾワッゾワッ
聞こえてきたのは声、より正確にいうならば何千もの人のざわめき声。しかし、真っ黒な空間に人間は『金槌』を持った男以外は存在を確認できない。
「やっと見つけた」
と、ここで男は口を開く。
するとこれに連動するかのようにピタリ、声が止んだ。
『ーーー』
またざわめきが聞こえるが、今度は言葉として聞き取れた。
ナ ニ ガ ?
男と女と少年と少女と老人と老婆……老若男女関係なく全ての声が同時に話すような声でざわめきが話す。
「頼み、いやここは呪いに来たか……まあなんだ、お前に呪って欲しいヤツがいるだけだ」
なぁ?簡単なことだろ、と男はせせら笑い、そして『金槌』を持ち上げ
「呪いの対象は俺様『達』!存分にーーー」
なにもないない空間に『金槌』を振り
「呪いやがれ!!」
落とした。
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