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「やあ。先程まではあっちにいたんだけど、君達の姿を見つけたからさ。僕らがいてもお邪魔ではないかい?」
「いえ、そんなことないですよエリオさん。一緒に兄さんを応援しましょう」
「はは、ノアちゃんはお兄ちゃんのことが大好きなんだね」
「そ、それは……」
エリオさんに言われ、顔が熱くなるのを感じた。
私は兄さんの事が好きだ。それは純粋に私の兄だからということもある。だけどそれだけじゃない。兄さんは私に居場所をくれた。あの薄暗い部屋で過ごす毎日から私を救ってくれた。本当に感謝してもしきれない。
「……はい。兄さんは、優しいですから」
「ノアちゃんの言うとおりロアは優しいし、いい男だよ。普通あれだけの力をもっていればもっと態度に出そうなものだけど、彼はいつも謙虚だからねぇ。ただひとつ問題点を上げるとしたら……」
「上げるとしたら?」
「アトちゃん、かな」
エリオさんはそう言って観客席から試合を観戦しているアトちゃんに視線を移した。
エリオさんの言いたいことは判る。兄さんは重度なアトちゃん好きだ。それにはちゃんとワケがある。
アトちゃんは元々、私達の義理の母親であるマリアという人だった。原因は知らないけれど、身体が小さくなって今の姿になってしまったらしい。詳しいことはまだ兄さんから聞かされていないからわからない。
「ふふ。いいんですよ。私もアトちゃん大好きですし」
「それには僕も完全に同意だね」
そう言うと、エリオさんはアトちゃんの隣に腰掛け、一緒に試合の観戦を始めた。
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