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「……やるなら今しかないか」
俺は腕につけているアブソーブリングを外し、魔装具を地面に置いた。
1つ深呼吸し、掌を地面につける。魔力を高め、頭の中で公式を描く。
普通なら、そこら辺を魔装具が補助してくれるのだが、魔王の力を宿している俺は自分の力だけで魔術を発動することが出来る。
魔術を完成させると、俺の掌から魔法陣が浮かび上がり、地面に吸い込まれていった。
「……よし。これで仕込みは完了だな」
アブソーブリングをつけ直し、魔装具を装備する。
今俺が地面に施したのは、この周辺に誰かが踏み込んだら俺に知らせてくれる目に見えない魔法陣だ。範囲はそう広くないが、万が一ということもある。仕込まない手はないだろう。
魔装具を剣帯に収め、闘技場内に設置されている巨大モニターを確認する。ポイントに変化はない。時間も約10分経過した。そろそろ警戒を強めた方が良い頃合いだ。
「――ただいま。今のところは問題なさそうね」
「そうか。順調だな」
「これがずっと続いてくれればいいんだけど……」
「まあ、そうはいかないだろうな」
敵もバカじゃない。こちらがこういった策を講じてくると予想もしているだろう。
だが、俺達は敵を誘い込むしかない。各個撃破できれば一番いいんだが、敵が1人で動くとも考えにくい。
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