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途中でミラとレンのどちらかとはち合わせるかもしれないが、今の俺では助太刀にもならない。役不足だ。だから悪いが無視させてもらう。
この試合、敵陣のフラッグを奪取してしまえば終わるんだ。俺1人で先行してフラッグを奪う。敵が攻めきれないと踏んで向かってきているのならそれを逆手にとってやる。
「――そろそろ中央が見えてくる頃か」
走りながら、辺りを確認する。まだ戦闘音は聞こえてこない。
隠密行動はユリアから学んだことがある。だから、ある程度の事は出来る。隠密の基本は急がば回れだ。ただ今回は時間も重要な要素であるため、一概にそうするわけにはいかない。
多少は急がなければならないのだ。敵と出くわすのもまずいが、こっちのフラッグを取られる前に敵のフラッグを取らなければならない。ポイントは最悪俺以外全員取られても構わない。それで負けるわけではないからな。
とにかく敵に見付からず、尚且つ素早く敵陣に辿り着かねば。
「……誰もいないな」
願ってもないことだが、上手く行きすぎている。
岩場の多い斜面を手足を利用しながら進む。近道だから障害物が多い。
モニターを見上げても、まだポイントの変動は確認できない。
「このまま何事もなく済めばいいんだが……」
―――――――●―――――――
【ミラSIDE】
ようやく追いついたと思ったら、敵は岩場の間に隠れてしまった。
しょうがないから私もその岩場をよじ登り、中に入ってやる。
「……っしょっと」
着地すると、そこは洞窟の中のような場所だった。
周りは岩で囲まれており、観客席からは完全に見えない位置だ。
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