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「――キャハ。やっと来た」
「……イルマ」
辺りを見渡すと、イルマともう1人長身のギルバートが岩を背に立っていた。
さっきまで追いかけていた敵の姿はなく、完全に誘導されたみたいだ。この2人がいるこの場所まで。
「待ってたのよ、ミラ。ようやく私が試合という名の口実の元、アンタを嬲れるこの時をね」
イルマは不敵に笑いながら私の方に近寄って来る。
「――すぅー……」
落ち付け。これは試合だ。
深呼吸1つし、今自分が置かれている状況を整理する。
まず大前提。この試合は負けられない。いくら相手がリーダーの妹であるイルマだったとしても。それからここには味方が私1人。さっきまで追いかけていた敵がまだこの辺りにいるかはわからないが、人数的に不利なことにはかわらない。
さらに私は退路も断たれている。出口はイルマ側か、さっき私が飛び降りた頭上の穴か。どちらも使えそうにない。加え、電波の通りが悪いのか、インカムが反応しない。ここまで考えてイルマはこの場所を選んだとしたら最早流石としか言いようがない。
状況は最悪。覚悟はしていたとはいえ、相手はあのイルマだ。戦い辛い。
幸い、ここは観客席から見えないから、この試合を見に来ているであろうリーダーが私とイルマの戦闘を見る事はない。
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