プロローグ

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そして泣き終えると幼かったリーンの顔を見て、この子を一人前の人間に育てなければいけないーー 母は気丈な人だからきっとそう想って今まで涙を堪えてきたのだろう。 それを誰よりも理解しているのはリーンだった。 (母さんはまた同じ悲しみを味わうかもしれないのに、僕の行く道を信じてくれてる、だから僕も応えるよ) 「母さん、約束するよ。僕は必ず生きて帰ってくる」 その言葉を聞いた母は、泣き止みかけた瞳から再び涙がこぼれ落ちる。 でも その顔はもう晴れていた。 「当たり前だよ!もし母さんより早く死んだら地獄の底からでも引っ張り戻してやるさ」 ーーそれから後はただの家族の会話だった。 父との出会い話 リーンと同じで辛い物が大好きだったこと 畑仕事がとにかく下手だったこと それにリーンの小さな頃の思い出… 最近は手伝いで忙しく、こんなに長く親子で話しをするのは久しぶりだった。 ロウ炭が灰になる頃には二人とも話し疲れてそのまま寝てしまった。 …そして朝は来る。
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