フリックロットへ

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店主が何かに気付き、コインケースの留め金を外すと一枚の硬貨がカウンターを転がり落ちて床に甲高い金属音が響き渡る。 「なんだよ、ちゃんとカネあるじゃねえか」 リーンは床に転がったその硬貨を拾い上げる 窓から入ってくる朝日に反射して光る一枚の硬貨。 金貨だった。 「ってか金貨かよ!ちょっと待ってな、金庫から細かいの取ってくるから」 店主が奥に消えてからコインケースを見つめる。 リーンの知らない内にこれをポーチに入れておける人物。 そんなことができるのは一人しかいない。 母だ。 母はリーンがこの金貨を直接渡しても遠慮して受け取らない事を知っていた。 しかし、それでも心配した母は、リーンが起きる前にコインケースと一緒にひっそりポーチの奥へしまっておいたのだ。 旅立つ我が子に幸あらんことを祈って…
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