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「狩り場では常に万全で戦えるとは限りません。場合によっては疲労困憊(こんぱい)の状態で戦わなければならない状況になるかもしれません。ですが疲れを引きずったまま戦場に向かうハンターはいません」
エステバンの次の言葉はここにいる全員の心に刺さる。
「覚えておきなさい、『狩る』か『狩ら』れるかの戦いに知識も無く、体調管理も不十分なまま飛び込んだ所で魔獣の腹を満たすだけです。そんな事もわからないならその短絡的な思考は今この場で改めなさい」
エステバンは鋭い目つきで全員を見つめる。
長い年月ハンターとして生きてきた男の眼。
その眼には厳しさだけではなくどこか深い悲しみもあった。
きっとエステバンは今まで共に肩を並べて戦った仲間が命を落とす所を何度も視てきたのだろう。
その中には、リーン達と同じ見習いのハンターもいたはずだ。
『君達を私の指導が至らないせいで殺したくはない』
そう語りかけてくる様な強い意思を持った眼だった。
リーンが感じた様に前の男にもそれが伝わったのか無言で席に座る。
他の皆にもエステバンの意思が届いた様で、もう誰一人不満を漏らす者は居なかった。
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