暁に越えて

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屋上ーー 下の喧騒が嘘の様にここは静かだった… そこで1人、昨日と同じ夕陽を眺めているリーン。 「ヨォ、こんなトコにいたのかい」 そう言って登って来るのはゼラ。 「ホレっ」 ゼラはリーンの座っている瓦礫の隣に腰掛けると、何かを投げて渡す。 それは手入れされたリーンのナイフだった。 「マァ飲みな」 空になったリーンのコップを覗いたゼラが持っていたジュースを注ぐ。 「どうも…ゼラさんもお酒飲めないんですか?」 「イイヤ、アタイは大好物ダヨ」 ゼラは狩り場では似つかわしくない高級そうなグラスにジュースを注ぐ。 「コイツはエステバンへの祝杯サ、ヤツは酒飲めなかったから」 言いながら沈みゆく夕陽に届かせる程空高くジュースを撒(ま)く。 「オ、流れ星」 すると夕陽に向かって流れ星が走り、昨日と同じ様にまた夜がくる。 「…そういえば昨日も見ました」 「…きっとエステバンのヤツが心配になって見に来たんダネ」 ゼラは屋上に積まれた一番高い瓦礫に上ると、満天の星空に向けて叫ぶ。 『見てたろ!誰も死んじゃいない、アンタの一番望む形の勝利だ!』
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