14626人が本棚に入れています
本棚に追加
/429ページ
屋上ーー
下の喧騒が嘘の様にここは静かだった…
そこで1人、昨日と同じ夕陽を眺めているリーン。
「ヨォ、こんなトコにいたのかい」
そう言って登って来るのはゼラ。
「ホレっ」
ゼラはリーンの座っている瓦礫の隣に腰掛けると、何かを投げて渡す。
それは手入れされたリーンのナイフだった。
「マァ飲みな」
空になったリーンのコップを覗いたゼラが持っていたジュースを注ぐ。
「どうも…ゼラさんもお酒飲めないんですか?」
「イイヤ、アタイは大好物ダヨ」
ゼラは狩り場では似つかわしくない高級そうなグラスにジュースを注ぐ。
「コイツはエステバンへの祝杯サ、ヤツは酒飲めなかったから」
言いながら沈みゆく夕陽に届かせる程空高くジュースを撒(ま)く。
「オ、流れ星」
すると夕陽に向かって流れ星が走り、昨日と同じ様にまた夜がくる。
「…そういえば昨日も見ました」
「…きっとエステバンのヤツが心配になって見に来たんダネ」
ゼラは屋上に積まれた一番高い瓦礫に上ると、満天の星空に向けて叫ぶ。
『見てたろ!誰も死んじゃいない、アンタの一番望む形の勝利だ!』
最初のコメントを投稿しよう!