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「そう言ってもらえるのはありがたいんだけどなあ……」
そもそも彼は高校生であり、勉強が本分でもある。家の『お役目』をこなしながら授業についていくというのは中々にハードであった。
「高校生活も始まったばかりだしね、まあ分からないことがあったら聞いてよ。眠いときは私がノートとっといてあげるし」
「すまん言乃ー、お前が幼馴染みでホントよかったあああああ」
にっと笑う彼女を見て、涙を流しながら喜ぶ拓夢。通学している生徒がぎょっとしながら追い越していく。その中にはひそひそ話しながら去っていく者も。
「ちょ、ちょっとやめてよぉ。恥ずかしいでしょ?」
照れ隠しに彼女はこん、と彼の頭を叩いてそっぽを向いた。彼に頼られるのは満更ではないのだが。県内でトップクラスの進学校である優学館高校、ここに拓夢が合格できたのは他ならぬ彼女の協力があってこそでのものだった。
ぴゅう、と春風が吹き抜けた。めくれそうになったスカートを両手でおさえる。きっ、と周りを睨み付けると、周囲の生徒は皆ぶんぶんと首と手を振った。
ほっとしたのも束の間。
「ほー、今日は……あっ」
――俺、死んだわ。
彼女の手が振り下ろされる間際、彼は呟いた。
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