23693人が本棚に入れています
本棚に追加
外はすでに明るい。
彼は外気を吸い、ため息をつくように息を吐く。
「つまんねぇ」
それがあの女への感想。
だから、次の約束なんてするはずもないし、名前すら記憶にとどめない。
彼はポケットを探り煙草を銜えると火をつけ歩き始めた。
車の多い通りまで行き、軽く手を上げタクシーを止める。
すると、その運転手はドアを開き営業用スマイルではなく、少し迷惑そうな顔をのぞかせた。
「すみません、お客さん。禁煙車なんですよ」
そんな台詞に彼は綺麗な顔を歪め、煙草を地面に落とすと踏みつけタクシーに乗り込んだ。
そして「どちらまで?」の声に行き先を告げ、シートに身体を預ける。
服に移ったのか、さっきの女の残り香が鼻をかすめ彼の顔を不快にゆがめる。
シャワーでも浴びてぇな。
そう思いつつ窓の外を見れば、まだ早朝の部類に入る時間だというのに日差しは強く、梅雨だというのに雲ひとつ見つけられない青空が目に入る。
それでもまだ梅雨は明けていないらしい事実をラジオのニュースが伝えていた。
最初のコメントを投稿しよう!