夏の思い出~プロローグ~

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「ヤダ! セミ取りに山がいい!」 「お前、昨日木に上って降りれなくなったの忘れたのかよ?」 「ヒロ君がまたおんぶしてくれればいいじゃん」 「はぁ? 昨日、俺がどんだけ苦労したか……」 そんなあたし達のやり取りに、顔をしわくちゃにして笑う大森のお婆ちゃん。 「今日はお日様がカンカンだから山のほうがいいかねぇ」 「ほらっ!」 嬉々としてあたしがそういえば、ヒロ君は「ちぇっ」と舌打ちを。 「しかし朝から暑いねぇ。ヒナちゃん、走ってきて汗かいたろ? スイカでも食べるかい?」 「食べる――!!」 「おいっ、セミは!?」 「あーとーで!」 「んなこと言ってっと、行かねぇぞ?」 「スイカが先ぃ!」 こんなにも楽しいのはヒロ君がいるから。
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