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「ヒナ?」
彼の声にはっとして。
「あ、えと、――そうだ! 『篠原さん』だよね。ヒロ、じゃなくてえっと先輩なんだし」
そんな台詞に、ヒロキは浮かべる笑みに苦味を混じらせた。
「いいよ」
「えっ?」
「今までの通りで」
「……えと」
そう言われても何も知らなかった子供の頃とは違って、いろんなことを知ってるからなかなか呼べなくて。
「じゃ、俺も二宮さんって呼ぶわけ?」
「えっ? やっ、だってヒロ君は年上――、あ」
思わず『ヒロ君』と呼んでしまった口を押さえても、元には戻らなくて。けれど、そっと見上げた視線の先で「それでいい」と彼が笑ってくれるから、
「……うん」
ヒナもはにかみながらそう答えた。
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