篠原ヒロキ

38/39
23677人が本棚に入れています
本棚に追加
/922ページ
「ヒナ?」 彼の声にはっとして。 「あ、えと、――そうだ! 『篠原さん』だよね。ヒロ、じゃなくてえっと先輩なんだし」 そんな台詞に、ヒロキは浮かべる笑みに苦味を混じらせた。 「いいよ」 「えっ?」 「今までの通りで」 「……えと」 そう言われても何も知らなかった子供の頃とは違って、いろんなことを知ってるからなかなか呼べなくて。 「じゃ、俺も二宮さんって呼ぶわけ?」 「えっ? やっ、だってヒロ君は年上――、あ」 思わず『ヒロ君』と呼んでしまった口を押さえても、元には戻らなくて。けれど、そっと見上げた視線の先で「それでいい」と彼が笑ってくれるから、 「……うん」 ヒナもはにかみながらそう答えた。
/922ページ

最初のコメントを投稿しよう!