夏はもうすぐ

3/16
23677人が本棚に入れています
本棚に追加
/922ページ
「なんて名前だっけ? あの川の名前。あの古い社とか今でもあんのかな?」 「どう、かな? あたしも小3までしかあそこにはいなかったから。その後は全然行ってないし……」 だからなんとなくヒロキとの距離は後ろ半歩分。 顔も上げられなくて、ヒナはずっと自分の足元を眺めながら歩いてた。 「ヒナ、こっち」 その声にハッと顔を上げると彼はヒナの前ではなく横。 「俺、車通学だから」 そう言って、90度方向を変えるからそれに付いて行こうとして――。 「あ」 歩きなれないピンヒール。 バランスの崩れた身体に伸びてきたのはヒロキの手で、その手が強くヒナを引き寄せた。 彼の胸にヒナの額がコツンと当たる。 瞬間、甘いココナッツのような香りがヒナの鼻を掠めた。
/922ページ

最初のコメントを投稿しよう!