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「なんて名前だっけ? あの川の名前。あの古い社とか今でもあんのかな?」
「どう、かな? あたしも小3までしかあそこにはいなかったから。その後は全然行ってないし……」
だからなんとなくヒロキとの距離は後ろ半歩分。
顔も上げられなくて、ヒナはずっと自分の足元を眺めながら歩いてた。
「ヒナ、こっち」
その声にハッと顔を上げると彼はヒナの前ではなく横。
「俺、車通学だから」
そう言って、90度方向を変えるからそれに付いて行こうとして――。
「あ」
歩きなれないピンヒール。
バランスの崩れた身体に伸びてきたのはヒロキの手で、その手が強くヒナを引き寄せた。
彼の胸にヒナの額がコツンと当たる。
瞬間、甘いココナッツのような香りがヒナの鼻を掠めた。
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