夏はもうすぐ

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「そんなサンダル履いてっからだよ」 「こ、これはあたしのじゃなくてっ」 「はっ? 何の話?」 「あ、やっ、なんでも……」 好きで履きなれないピンヒールを履いてるわけじゃなくて、だからって貸してくれた唯が悪いわけでもない。 このサンダルを借りた経緯だって話せないし、いろんな感情がこんがらがって。 不貞腐れるように頬を膨らませれば、 「ふっ、あははっ、その顔、変わんねぇな?」 ヒロキが噴出すように笑うから、ヒナは「もうっ!」と、さらに頬を膨らませた。 笑う彼の右頬にえくぼが浮かぶ。その景色は彼だって変わらない。 そう言いたかったけど……。 あの頃は身長も同じだったのに、今は見上げるほど高い。 笑った顔は面影を残すけど、あの頃とは全然違って――、 思わず、見惚れてしまいそうになる……。
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