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つかまれた腕がそっと開放される。
そして、また歩き出して駐車場に。彼が一台の車に近づけばカチャッと鍵は自動的に開いて。
「ほら、乗れって」
開けられた助手席のドア。
その車は周りのものより一回り大きく、周りのものとは『違う』ことが車に関して詳しくないヒナでも分かるほど。
車種名ははGT-R。色はメタリックのダークグレー。
エンジン音は低く重たく響き、それだけで周囲の学生が振り返る。
勿論、持ち主のせいもあるだろうけど。
ヒナは不貞腐れたまま「失礼しまーす」とあけられたドアから車に乗り込んだ。
その空間は、あの甘いココナッツの香りに支配されていて……。
フロントガラスから差し込む夕日にヒナは目をそばめ、ヒロキはサングラスをかけた。
低いうなり声を上げて走り出す車。
その音すら、心地よくて――。
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