夏はもうすぐ

14/16
前へ
/922ページ
次へ
「しかし、俺ってわかったならもっと早く声かけりゃよかったのに」 メインはラム肉のワイン煮。 とても柔らかく、ナイフに力は要らないくらい。 それを頬張ってゴクンと飲み込むとヒナは「だって」と返す。 「分かったの、今日だもん」 「マジで?」 ヒロキはナイフを持つ手の動きを止めて、向かいに座るひなの顔を覗き込んだ。 「なら、本も読んでねぇの?」 「あ、……うん」 聞いただけ。 なんとなく申し訳なくて、「ごめん」と言うとヒロキは軽く「いいよ、別に」と笑う。 「たいしたことじゃねぇし」 「そんなっ、凄いって! って、知らなかったあたしが言うのも変、だけど……」 小さくなっていく声にヒロキは「いいって」微笑んで。
/922ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23702人が本棚に入れています
本棚に追加