彼女、時々強引につき。

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「すーがーわっ!」 弾むような声に、しまったと思う。 ずっと逃げ回っていたのに、2日目にして捕まってしまった。 それでも、もった方だと思う。 「うるさい、黙れ」 溢れ出そうな溜め息を堪え、気にしていない風を装ってそうたしなめる。 昼休みを迎え、社員で賑わっている食堂。 束の間の休息も、騒がしい深田樹の登場で台無しだ。 「ちょっと、まだ何も言ってないっしょ」 向かいの席にすとんと腰を下ろして、深田は笑う。 「お前の言いたいことなんて、聞かなくても分かる」 分かっているからこそ、ずっと逃げていたんだから。 深田は十中八九、愛のことを問い詰める気だ。
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