聖者との遭遇

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闇の中、息を切らしながら必死に走るのは、一人の少女。 その後ろを、ナイフを片手に下卑た笑みを浮かべながら走るのは、一人の男。 「お嬢ちゃん!待ちなって!すぐ楽にしてあげるからさぁ!」 ーーー何でこんな目に!! この男は、この数日で三人の女性を殺している殺人犯。少女は偶然その犯行現場を目撃してしまい、男の標的となってしまった。 ーーー折角今日光君と付き合えたのに、もう私の人生終わりなの? 少女と男の脚力の差は明らかで、男は着々と距離を詰めている。 「捕まえた♪ほらほら、大人しくして」 ナイフを振り上げ、少女の心臓に狙いを定める男の目は、狂気以外の色は映らなかった。 ーーーいや!イヤ!嫌! 「誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 恐怖のあまりに目をつむる少女。永遠とも思える時間が過ぎても、ナイフが振り下ろされる気配はない。その時聴こえたのは、何か重い物が地面に転がる音、水を上からバシャバシャと落としたような音、何かが地面に倒れる音。
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