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これを見た時に桜はとても悲しく、とても嬉しく、とても悔しく、とても懐かしい…そんな思いで胸一杯になった
店主のお爺さんにこれを下さいと言ったら
「!!……お嬢ちゃん、この木刀が見えるのかね?」
お爺さんはとても驚いた顔をして、次にこう言った
「…泣いておるのかね」
言葉に驚き自分の頬に触れると確かに涙が流れていた
「持って行きなさい、お代は入らないから…この木刀の名は桜月繚乱<オウゲツリョウラン>だよ、大切になさい」
そう言ってお爺さんはこの木刀を桜に譲ったのだ
そんな不思議な出逢いの下で桜の物になったこの木刀…桜月繚乱は桜の拠り所でもあった
「……………………」
何を考える訳でも無く目を閉じ、桜月繚乱を抱き締め続ける
ぱぁ……
「え………?」
抱き締め続けて居ると桜月繚乱が輝き始める
そして目の前に一人の女性が現れる
「まだ…思い出す事は出来ませぬか?」
桜色の長い髪に巫女のような服を着たとても綺麗な女性が
「誰…?」
誰かは解らないけど知っている気がしてならない
心がざわめく、とても…懐かしい感覚
「…………そう、まだなのですね」
懐かしい声と懐かしい姿
でもどうしても今目の前にいる女性の事が思い出せない
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