へっぽこな出会い

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鳩はデン助たちのやりとりを一向に気にする風もなく、唐突に切り出した。 「ところで、みなさんに質問があるですポ」 「し、質問だと!?」 「はいですポ。わたくしは……いったい誰でしょう?」 「べらぼうめえ! おちょくるのもいい加減にしやがれってんだ!」 「デン助さんてば!」 「ポッポッポッポッ、質問を変えた方がよさそうですね。それでは……ここは一体どこでしょう?」 「はあ?」  デン助とゴン太が顔を見合わせた。 「ポッポッポッ、いやはや弱りました。これではどこに向かえばいいのやら。  ……それにしてもひどいにおいでクルポッポ」 鳩はクチバシのあたりを羽で押さえながらあたりをうろつき、 時折、なにかを確かめるように地面をつついてはほじくり返していた。 その挙動不審な鳩の様子に、デン助とゴン太が同時にハッとする。 「おめえ、まさか!?」 「……ポ?」 「デン助さん! あの鳩さん、ボクにぶつかったのが悪かったんじゃない!?  ひょっとして頭にぶつかっちゃったのかも……ボク、すごい石頭だし、どうしよう?」 今にも一雨きそうな顔でゴン太がデン助を見る。 デン助はふうとひと息ついて腕を組み、鳩に呼びかけた。 「よう、ポッポ屋!」 「ポッポ屋? それがわたくしの名前でございますか?」 「そうじゃねえよ! とりあえず、名前くらいなきゃ話が進まねえから、オレがつけてやったんでえ!」 「ポッポッポッ、いいですねえ、ポッポ屋。気に入りましたよ」  デン助の雷がまた落ちそうになる気配を感じて、ゴン太が割って入る。 「え、ええと、ポッポ屋さん?」 「ズバリ! わたくしのことですね?」 「う、うん。あのね、たぶんなんだけど、ポッポ屋さんの記憶、  どこかに落っこっちゃったんじゃないかな?」 「ポー、記憶がですか?」  まるで他人ごとのようにつぶやく。 「うん、もしかしたら、ボクのせいかもしれないんだけど……  なにか覚えていることはない?」 「そうでございますねえ」
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