へっぽこな出会い

4/6
前へ
/57ページ
次へ
ポッポ屋が、どこを見ているかわからない黒い目をしばしばさせる。 思い出そうと努力しているようだった。 「……あ、そういえば、なにかとても大きな音を聞いたような気がするですポ」 「(デン助さん!? さっきの銃声のことかな?)」  ゴン太がデン助に耳打ちする。デン助は鳩から目を離さないまま黙って頷いた。 「それから……ああ、駄目ですポ。そこからは頭が真っ白になっておりますポ」 「するってえと、その大きな音を聞く前のことは、まったく覚えてねえってんだな?」 「ポ? そういうことになるんですか?」 「オレが聞いてんだよ!」 「ポッポッポッ、つまりわたくしは、あの音のせいで記憶をどこかに落としてしまったと、  こういうわけですね? なるほどなるほど……」  鳩が考え込んでしまったところで、デン助がゴン太に言った。 「おい、ゴンの字、ポッポ屋が記憶を忘れたのはおめえのせいじゃねえようだぜ?」 「う、うん。でも……」 「ま、ちょいと血の巡りが悪いのは、確かに打ち所が悪かったのかもしれねえがな」 そう聞くと、やはり悪いことをしたみたいに、ゴン太は申し訳ない気持ちになった。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加