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ポッポ屋が、どこを見ているかわからない黒い目をしばしばさせる。
思い出そうと努力しているようだった。
「……あ、そういえば、なにかとても大きな音を聞いたような気がするですポ」
「(デン助さん!? さっきの銃声のことかな?)」
ゴン太がデン助に耳打ちする。デン助は鳩から目を離さないまま黙って頷いた。
「それから……ああ、駄目ですポ。そこからは頭が真っ白になっておりますポ」
「するってえと、その大きな音を聞く前のことは、まったく覚えてねえってんだな?」
「ポ? そういうことになるんですか?」
「オレが聞いてんだよ!」
「ポッポッポッ、つまりわたくしは、あの音のせいで記憶をどこかに落としてしまったと、
こういうわけですね? なるほどなるほど……」
鳩が考え込んでしまったところで、デン助がゴン太に言った。
「おい、ゴンの字、ポッポ屋が記憶を忘れたのはおめえのせいじゃねえようだぜ?」
「う、うん。でも……」
「ま、ちょいと血の巡りが悪いのは、確かに打ち所が悪かったのかもしれねえがな」
そう聞くと、やはり悪いことをしたみたいに、ゴン太は申し訳ない気持ちになった。
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