へっぽこな出会い

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考え込んでいたポッポ屋が、なにかを思いついたように突然しゃべり出した。 「ポッポッポッ、いやはや本当に参りましたねえ。  これは、みなさんにお願いするしか手がないようですポ」 「お願いだと?」 「はいですポ。わたくし、これから飛んできた方へ戻ってみようと思っているのですが、  土地勘もないことですし――いえ、仮にあったとしてもすっかり忘れてしまっているようなので、  ぜひともみなさんに案内していただきたいんですポ」 「どうしてオレたちがそんなことしなきゃならねえんだよ!」 「ポッポッポッ、それはもちろん、わたくしが落としたという記憶を探しに行くためですポ。  どこかに記憶のカケラでも落ちていれば、なにかを思い出すかもしれないですポ」 「バーロー! なんでオレたちがそこまでしなきゃならねえってんだよ!」 「ポーッポッポッポッ! よくぞ聞いてくださいました。  それはズバリ! わたくしの記憶を取り戻すためですポ!」 「こ、この野郎ッ――」 「デン助さん!」 ずっと黙っていたゴン太が真剣な顔をしてデン助を押しとどめた。 「なんでえ!」 「案内してあげようよ」 「なに!?」 デン助が怖い顔でにらむ。 一瞬ひるんだゴン太だったが、モジモジしながらも先を続けた。 「ポ、ポッポ屋さんがあんな風になっちゃったのは、もしかしたら、ボクのせいもあるのかもしれないし、 それに、ボクもまたひとりになるのはイヤだし……だから……」 「ちょいと待ちねえ」 デン助はひとつ頷いて、ギョロッとした目を閉じた。 「ゴンの字よ、めえさんの気持ちはわかった。けどよ、こいつはそんなに難しい話じゃねえ」 デン助が目を開けてポッポ屋を指さした。 「いいかい? なにもオレたちが案内しなくたって、 あいつはこの沼の向こう側だろうとどこだろうと、 自分で飛んで行って見てこられるじゃねえか。 土地勘なんかなくなって、心配することはねえんだよ」 ゴン太は「あ、そっか」という顔をしてポッポ屋を見た。
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