へっぽこな出会い

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ゴン太とデン助を交互に見ていたポッポ屋がここで口を開いた。 「ポッポッポッ、デン助どのとおっしゃいましたか?」 「おう」 「なかなか面白いことをおっしゃいますポ」 「あん?」 デン助がギョロ目で睨めつける。 「わたくしがなぜここに落ちてきたのか、あなたまで記憶を失ってもらっては困りますポ」 「なにが言いてんでえ……」  デン助が低い声で気色ばむ。 「あ”ーーーーーーーーーッ!?」  ゴン太が突然大声を出し、凄んでいたデン助が驚く。 「な、なんでえゴンの字! ビックリするじゃねえか!」 「ごめんなさい! でもボク、わかっちゃったんだよ!」 「なにがよ?」 「ポッポ屋さん……飛べないんだよ……」 「はあ?」 「きっと、飛び方まで忘れちゃったんだよ!」 「ポッポッポッポッ、ズバリ、ご名答でございますポ!」 ポッポ屋が羽根を広げて、ゴン太を褒め称えた。ゴン太は「エヘヘ」と照れている。 「いやあ、お恥ずかしい話でございますポ。 羽ばたき方にも、きっとコツがあったんでございましょうねえ」 そうい言いながら羽をバサッバサッと振ってみせるポッポ屋。 確かに、いっこうに浮き上がる気配はなかった。 バサバサッ! バサバサッ! 「ええい、やかましい!」 堪忍袋の尾が切れたようにデン助が怒鳴った。 「これは失礼クルポッポ。 しかし、これで納得していただけましたでしょうか。 わたくしを案内しなければならない理由が?」 デン助は、納得するどころかむしろ頭に血がのぼっていた。 しかし、ゴン太の顔を見ると、案の定、うるんだ瞳で見つめ返してきていた。 まったくオオカミらしくないオオカミだった。 デン助は自分でも不思議なほど、このオオカミを放っておくことができなくなっていた。 この憎めないオオカミのためにひと肌脱いでやろうか……そう思う。 しかし、他人様にものを頼む態度とは思えないポッポ屋を目にすると、 どうにも腹の虫がおさまらなくなってくるのだった。
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