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すると、ポッポ屋が珍しく遠慮がちに口を開いた。
「……ポッポッポッ、みなさんがどうしてもわたくしを案内できないとおっしゃるなら、代案がなくもないですポ」
「代案だと?」
デン助が、ポッポ屋をにらんでオウム返しに聞き返した。
「ええ、プランBですポ。うまくいけば、最小限のリスクで記憶を取り戻すことができるかもしれません。
場合によっては、徒労に終わる可能性もございますが――」
「ダーッ! まだるっこしい話は抜きでえ!」
デン助が、腹を据えてポッポ屋に向き直る。
「言ってみな、そのプランBってヤツを。聞くだけは聞いてやろうじゃねえか」
「デン助さん!」
ゴン太が目を輝かせながらデン助に飛びつき、犬のようにペロペロと顔中なめまくった。
「おいよせ! ゴンの字、息ができねえ!」
カエルにじゃれつくオオカミという珍妙な光景をじっと見たあと、
ポッポ屋がはるか遠くを見るようなまなざしで言った。
「では、単刀直入に申し上げますポ」
じゃれついていた二匹が静かになる。
「ゴンの字さんとおっしゃいましたね?」
「え? あ、ボク、ゴン太です!」
急に自分に水を向けられて驚いたゴン太が、しどろもどろにこたえた。
「では、ゴン太どの。この沼の向こう岸まで行ってきてもらえますでしょうか?」
「え! ボクが!?」
「ご覧のとおり、向こう岸以外は、ほとんど山に囲まれておりますポ。
平坦な道のりとはいえないでしょうが、オオカミのゴン太どのなら、けして無理な話ではないですポ」
ゴン太がどっと汗をかきつつ、ポッポ屋のしめした方に目を向ける。
淡く頼りない陽の光の下、沼のあぶくから放出されるガスで、向こう岸はかすんで見えた。
「到着しだい、ひととおり周囲の様子を見ていただいて、
あとは戻って、状況報告していただくだけで結構ですポ。
記憶というのは、なにかひとつキッカケさえつかめれば芋づる式に出てくるそうですからね。
ひょっとすると――」
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