始動! プランD!?

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「却下だな」  デン助がポッポ屋の話を打ち切った。 「ポ?」  切なげにうつむいているゴン太をチラッと見やってから、デン助が続けた。 「ポッポ屋が知らねえのも無理はねえが、ゴンの字はな、 そもそもこの沼地に迷い込んできた〝迷いオオカミ〟なんだよ」 「迷いオオカミ?」 「ボ、ボク、その、すごい方向音痴で、今日もそれでここに来ちゃって、だから……」  ゴン太が申し訳なさそうにみじろぎする。 「そうだったんですか。知らなかったとはいえ、失礼しましたクルポッポ」 「ご、ごめんなさい」  どこにいても、役に立つことができない自分を責め、ふさぎ込むゴン太。 デン助がポンポンと水かきのついた手のひらで軽く叩き、ゴン太を慰める。 ポッポ屋はさして失望した様子もなく、黒目をクルクルと回転させて言い放った。 「では、プランCにいきましょう」 「プランCだと?」  デン助が怪訝な顔する。 「ええ、松竹梅でいうと梅クラスのプランですポ。まあ、ないよりはマシでしょう。 代案を複数用意しておくのはプランニングのセオリーですからね」 「御託はいいから言ってみやがれ!」  ゴン太が、今度こそと期待を込めたまなざしで聞き耳を立てる。 「デン助どのに、向こう岸まで泳いでいってもらいたいんですポ」 「!?」 「今言える確かなことは、わたくしが落ちてきた方角から判断して、 沼の向こう側からやってきた、ということだけですポ」 「おい――」  デン助が口を挟みかけるが、ポッポ屋は立て板に水のごとく話し続ける。 「ひょっとすると、わたくしのいた群れが、まだ向こう岸のどこかにいるかもしません!  いえ、そうでなかったとしても、なにかしら記憶のカケラくらいは落ちているかもしれないですポ!」  勢い込むポッポ屋とは裏腹に、デン助が無表情になっていく。ポッポ屋は気づかず、話し続けた。 「この沼地は、察するところ、デン助どのの庭のようなものでしょうから、危険地帯も熟知されているはず。 であれば問題はひとつ――デン助どのの足で、果たしてどれくらいかかるのかというところですポ。 ここでゴン太どのに守っていただくにしても、飛べない鳩が一箇所に長居するというのは、 あまり得策とは言えないですからね」
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