始動! プランD!?

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「デン助どの、わたくし、今のお話に感動してしまったんですポ!」 「はあ?」 「……なぜでしょう?  わたくしどもは、ふと気がつくと、〝できること〟より〝できない〟ことに目を向け、  生きてしまっておりますポ」 「おいおい、どうしちまったんだ?」  熱を帯びた口調で語り始めたポッポ屋に、戸惑い気味のデン助。 「せっかくこの世に生まれてきて、なぜ、わざわざ苦しくなる方、  悲しくなる方を見つめて生きてしまうのでしょう?  それでは、ますます自分がミジメになるばかりですポ……」  デン助は肩をすくめ、「だめだこりゃ」のポーズをしてゴン太に目配せしてみせた。 ゴン太は同調するどころか、ポッポ屋を食い入るように見つめていた。 「カエルのくせに泳げない、そんなカエルがまさかいるとは思いもよりませんでした」 「ほっとけてんだこんチクショーが!」 「待ってデン助さん!」  ポッポ屋につかみかかりに行ったデン助を、ゴン太が必死に押しとどめる。 「ゴ、ゴンの字?」  デン助が不思議そうにゴン太を振り返る。 ゴン太は「お願い!」という顔で瞳をうるませていた。 ポッポ屋は、どこを見ているかわからない黒い目を一度だけクルクルさせたあと、 妙に響く声で先を続けた。 「デン助どのにしてみれば、泳げないことは死活問題だったはずですポ。  しかし、今のデン助どのを見てください!」 「あん?」  デン助は、なにか自分におかしなところがないか、 体のあちこちを確認し、泥だらけの足の裏のにおいまで嗅いだ。 「なんでえ、いつもとおりじゃねえか!」 「そう! それがすごいんですポ!」  ポッポ屋がバサッと羽根を広げて叫んだ。 「デン助どのは、泳げないカエルのくせに、図々しく、短気でワガママで、 むしろ泳げるカエル以上に堂々として、実にあっけらかんと生きておりますポ!」 「てめえ! 全然褒めてねえじゃねえか!」 「ポッポッポッポッ、デン助どの、これ以上の褒め言葉はないですポ」  ポッポ屋が、どこを見ているのかわからないその目を、 さらに果てしなく遠いまなざしにしてつぶやいた。 「本当の幸せというものはどこか遠くにあるものじゃなく、 今ここいいる自分をあるがままに生きてゆく、そのたくましさの中にあるのかもしれないですねえ……」  
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