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フブキが速度を落とさないまま、一番後ろを走っていたオオカミを呼んだ。
「ゴン太! ちょっとおいで」
オデコのでっぱった不器量なオオカミが、ぐんとスピードをあげて、
一瞬でフブキの隣に並んだ。首まわりの灰色の毛が異常に長く、
ライオンのたてがみのようにフサフサしている。
「はい! ゴン太、来ました!」
「ゴン太、おまえは仲間うちじゃあ、一番泣き虫で臆病なオオカミだ」
フブキの後ろにピッタリとつけていた目の細いオオカミが「ケケケ」と笑った。
ゴン太は、また説教されるのかと思ってシュンとした。
「けれど……足は誰よりも速いし、その気になれば大木だって倒せる石頭を持ってる」
ゴン太はクイッと自分の突き出たオデコを見上げ、口元をだらんとほころばせた。
しまりの悪くなった口元から大量のヨダレが流れ出す。
ヨダレは風の抵抗を受け、ゴン太の顔にベトベトと張りついていった。
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